多治見弁の特徴
文法の特徴
進行形
共通語の「~ている」という形は、進行中の動作を表す場合と、動作が起こった後の状態を表す場合があります。
- 進行中 : 子どもがご飯を食べている。
- 後の状態 : 財布が落ちている。(←「落ちた」後の状態)
多治見弁では、「~ている」は「~とる」となりますが、進行中の場合だけ、「~よおる」とも言います。
- 進行中 : 子どもがご飯を食べとる。/子どもがご飯を食べよおる。
- 後の状態 : 財布が落ちとる。
「行く」「帰る」「変わる」「落ちる」「死ぬ」のような、行き来や瞬間的な変化を表す動詞では、「~とる」と「~よおる」で意味が違い、進行中のことを「~とる」とは言いません。
- 財布が落ちよおる。(落ちつつある。落ちかけ。)
- 財布が落ちとる。(すでに落ちて、下にある。)
「食べることができる」ということを、共通語では「食べられる」というのが正式ですが、「食べれる」という人も増えてきて、これを「ら抜きことば」と言います。
多治見では、伝統的にこの「食べれる」「着れる」「見れる」「来れる」のような言い方をしており、今に始まったことではありません。
このほかに、「多治見弁の語尾」に挙げたような、さまざまな語尾があります。
発音の特徴
イの発音
母音の連続 ア+イ が アー、ウ+イ が ウー、オ+イ が オー のような発音になります。この3つがまとまって生じるのは、東濃地方と愛知県瀬戸市くらいです。
アクセント
細かな違いはありますが、総じて言えば共通語に近いアクセントです。
違いは、次のような点にあります。
- いくつかの単語のアクセントの型
- 単語の最初の音が少し長めになりやすい。
- 下図のような高さの変化の違いがある。(「美濃焼卸団地」と言う場合)
市内のアクセント境界線
2013年の60歳代~70歳代の多治見弁話者の調査で、「日」「葉」「矢」などの一部の1文字の名詞のアクセントがほぼ土岐川を境に違っていることがわかりました。土岐川の右岸(北側)ではこれらの名詞を高く、そのあとの「が」などの助詞を低く発音します(例)。これは岐阜県の多くの地域や名古屋市などと同じです。一方、土岐川の左岸(南側)では反対に、これらの名詞を低く発音し、そのあとの「が」などを高く発音します(例)。これは東京を含む共通語のアクセントと同じです。なお、土岐川沿いの共栄小学校・養正小学校・昭和小学校の各校区では、両方のアクセントが混在していました。
このほか、多治見弁のいろいろな特徴については、こちらのブログで書き足していく予定です。
上記の調査には、多治見市民の皆様の御厚意で、多大な御協力をいただきました。方言の調査には、そのことばの生きた使い手の協力は欠かせないものです。質問・御意見などがありましたら、御意見・お問い合わせフォームからぜひお寄せください。